(株)日清経営技術センター   NKCレポート 2008.2より転記してHTML化しました  
ブーランジュリーKヨコヤマの挑戦
「ブーランジュリー K ヨコヤマ」 JR京浜東北線南浦和駅から歩いて20分ほどのところに青い扉のベーカリー「ブーランジュリー K ヨコヤマ」がある。20台分の駐車場が用意されているせいか、車で来店するお客様が多い。いわゆる郊外店である。 周囲は市街化調整区域になっており、住宅密集地でもない。しかしながら35坪(販売部分12坪)のお店には平日400人、休日はその倍ほどのお客様が来店されるという。まだ開店して3年目の「ブーランジュリー K ヨコヤマ」にどんな秘訣があるのか、オーナーシェフの横山暁之介氏に伺った。写真は店舗外観。

 我々はサービス業、お客様の立場にたって働くのは当たり前
平日の午前11時。小さなお子さん連れのお母さんや高齢者のご夫婦まで、客層はさまざまだが、店内はお客様で一杯。すぐにレジに行列ができる。するとレジ担当だけでなく、奥から製造スタッフもすっと出てきて応対する。家族分のパンだろうか、トレイいっぱいに盛られたパンを、袋に入れる際、どのスタッフもつぶれないよう、そして重ならないにように丁寧に入れている。その動きには無駄がなく、整然としている。
「私たちはサービス業ですから、まずはお客様の立場に立って、今何をすべきかを考えるのは当然です。自分の身なりはもちろんですが、お店の中、奥の厨房での動きも、お客様に失礼のない、清潔感のある印象を与えることを普段から指導しています」と横山シェフ。 「私が料理をやっていたからでしょうか、我々はサービス業であるという意識は強く持っています。ベーカリーで働くスタッフ、特に男性はすべてといっていいほど独立志向を持っています。そうなると、働くこと=パンの製法とか、パンの形とか焼くことだけに一生懸命になりがちなんですね。でも大切なのは、その先のお客様がどのように召し上がるのかを考えたり、接客の時にいかに失礼のないように応対するかが大切なんです。そういうことを若いうちから身につけていかないと、間違った方向にいってしまうのではないでしょうか」
店内写真
レジ脇のミネラルウォーターのサービス。
お客様にとってはこんな心配りがうれしいもの。


 5年でパン職人のプロデビューまでに育てる
ディスプレイとして店内に置かれたスタッフのコンテストや、資格取得の賞状

数々のコンクールでの受賞の賞状などが飾られている

フランス料理のシェフから大手リテールベーカリーで商品開発部門を束ね、国内・海外でのベーカリーの指導・コンサルティング・講演活動と、職人としての顔とともに、ベーカリーのあるべき姿をよく知る横山シェフ。自店のスタッフにも、技術はもちろんだが、その他の部分もしっかり教えたいとおっしゃる。
「職人の育成というのも、限られた時間でやらないといけないと思っています。私が考えるのは学校を出てから5年。その間に技術はもちろんですが、プロになるための一連の流れを学ぶという修行をさせます。外で通用する資格も取らせていますし、日清製粉さんの3ヶ月のパン講座にも通わせます。コンテストも積極的に挑戦させています。また、他店への研修や、私の講習会の助手もさせたりして、人とのネットワークなども作れる環境を与えます。こういう経験を繰り返せば、10年かかる修行も1/3か半分ぐらいまでに短縮できると思うんです」
確かにお店にはコンテストの受賞証書やメダルがディスプレイされていたり、資格証書も飾られ、店への信頼感が増しているように思える。直近では日清製粉創・食Club主催のパンレシピコンクールで佐藤副店長の作品「ソレイユ」が準大賞に輝いた。
「5年の修行はたいへんですよ。ただ、若いこの時期は1度しかない。体力もあって、独身で、冒険もできる。思いっきり集中できるこの時期が、一生を決めてしまうといっても過言ではありません。パンについてはあくまで粉と発酵ですからパン生地そのもの、基本をしっかり覚えてほしいですね。流行のアレンジばかり覚えてしまうと成長が止まってしまうと思います」

創・食Club主催準大賞に輝いた「ソレイユ」

「パンはきれいに焼けなければ嫌なんです」
店内の石窯
左:スペイン式回転石窯
右:固定式石窯

「ブーランジュリー K ヨコヤマ」の店は、青い扉と石窯が印象的だが、実際に特注のスペイン式回転石窯と固定式石窯でパンを焼いている。
「正直なところ、開店当初は試行錯誤の連続でした。今石窯で焼いているお店も結構苦労されているのではないでしょうか。でも蓄熱はいいし、通常の窯の6割ほどの時 間で焼ける。
私はパン自体がきれいでなくてはいやで、そういった意味でも、きれいに焼けるので今は重宝しています」そんな「きれいなパン」が、店頭には120〜130種類並ぶ。
人気のパンはクロワッサンなどのヴィエノワズリー、4種類の生地から作るフランスパン、ブレッド類や食事パン。ピザ、カレーパンなど。特筆するのはハムやベーコン、季節のフルーツや穀物類の加工から、ソースやフィリング、クリームに至るまでパンとあわせて手造りされ店頭にならんでいる ことだ。最近ではチーズケーキやシュークリーム、カヌレ・ド・ボルドーなど焼き菓子にも力を入れているという。
それらを朝7時オープンで、夕方5時ぐらいには売り切ってしまうという。「私は、時間に合わせてパンを焼くという感覚はないんです。立地的なこともありますが、朝から丁寧に焼いて午後早い時間で焼き終わり、それを売り切って閉店。お客様もわかっていただいていて、早い時間にみなさん買いにきていただいています」
石窯レーズン 600円
ほうれん草のフォカッチャ 120円
石窯シュークリーム 140円
もちもちカレーパン 140円
魅力的なヴィエノワズリーが並ぶ
石窯ピザ 180円

 お腹が空いたときにパンが思い浮かぶようでなければ、パンのプロではない


「料理の世界から入ったからでしょうか。料理はまかないから覚えていくものですが、パン屋はそれがない。昼食もロスのパンを厨房でかじったりすることが多い。ベーカリーは食を提供している場なのですから、それではプロではないですね。うちのスタッフにはお昼や休憩時に店頭にあるパンを食べるよう指導しています。お客様が食べているのと同じものを食べる。最低でもそうしないと味がわかるようにならない。
今春からは野菜を使ってまかないをさせようと思っています。もっと食を提供しているんだという意識を持たせなくてはと思っています。それにパンのプロは、お腹がすいたとき、パンが浮かんでこないといけないと思うんです。表面だけ追いかけていては、お客様に喜ばれるパンは作り上げられないのだと思います」。 店内では、専門学校卒業生を中心とした男女10数名が、食をトータルで学ぶという姿勢で生き生きと働いている。また、国内外から研修希望者も多く、これもお店を活性化している。
こういったパンへの姿勢が、お客様に伝わっているからこそ、開店してわずか3年、しかも郊外で、わざわざ来ていただく立地であるにもかかわらず、これだけの人気店としての地位を得ているのだと実感した。


◆ オーナーシェフ 横山 暁之介 氏 ◆

1954年 高知県出身

南仏料理店ビストロ・ラ・ココットのシェフ、作曲家、指揮者であった故菅原明郎家の料理人を務めたあと、大手チェーンベーカリー執行役員、商品開発部長となり、台湾、米国、韓国のベーカリー、レストランの技術指導に20年間あたる。
パリの製菓学校で石窯パンを学び、帰国後郊外型スペイン石窯工房の立ち上げに携る。
04年6月独立しブーランジジュリー・K・ヨコヤマを開店、2年で会社組織として企業顧問、国内外セミナー講師などを努める。カリフォルニアレーズンコンテスト「鉄人大賞」はじめ、プロを対象としたベーカリーコンテストの受賞歴多数。 人材育成には定評があり、国内外よりの研修生も多い


◆ブーランジュリー K ヨコヤマ ◆
埼玉県川口市小谷場455-1 TEL048-263-0222
営業時間7:00〜19:00